HOME>コラム「分析機器の眼、人の眼」>第1回 分析機器の寿命は何で決まるの?

ガスクロマトグラフィー(以下GC)やガスクロマトグラフィー-マススペクトロメーター(以下GC-MS)は、異臭分析には欠かせない分析装置です。GCは、臭いの様な気化するサンプルを分析する方法で、①臭いの濃縮サンプル(混合物)を気化する。(気化部)、②カラムで混合物を分離して単一の化合物を選り分ける。(分離部)、③最終的に単離した化合物を検出する。(検出部)、の順に臭いを構成している化合物を分析します。

通常、GCの検出器は、通過した有機物の量だけを検出するため、分離された物質がどういう物質なのか同定は不可能です。したがってGCでは、予め判っている物質を同じ条件で分析し、同じ時間で検出されれば同じ物質だと同定します。

出てきた物質を確実に同定する検出器が、マススペクトロメーターで、検出された物質のマススペクトル(質量数等の情報)とマススペクトロメーターに付属しているコンピュータ内の標準のマススペクトルとを照合し、同定します。標準のスペクトル数は10万件以上あり、かなりの確度で同定が可能です。しかし10万物質との照合となると、人の手には負えません。そのため、分析機器にもコンピュータが必須となって来ました。

現在では、検出器にマススペクトロメーターを繋いだGC-MSで分析するのが標準となっています。値段は、GCが100~数百万円、GC-MSがその十倍の1000~2000万円という所です。 これら、分析装置の寿命は、本体は使い方が良ければ、10年以上、20年は十分持つのですが、データ処理用PCの商品サイクルが短く、PCの寿命とともに使えなくなるのが現状です。

初期のH社GCのデータ処理機には、モトローラ68000を使った20年前当時のワークステーションが使われており、わが社では現在も10Mのハートディスクと共に老体に鞭打って稼動しています。ただ電源を切るとハードディスクが回らなくなるので常に電源は切れない状況なのです。データの打ち出しは、GP-IBで繋がれたThinkJetプリンターと言うインクジェットプリンターを使うのですが、これも3台目で、3台目の購入は、ネットの中古販売で何とか手に入れました。GC本体は、設定キースイッチが何ヶ所か効かなくなっただけで、その他はまったく問題なく使えています。H社のGCは、本当に丈夫で長持ち、性能も良く、言うことありません。

S社のGC-MS、使用頻度は多く無い装置ですが、これも10年以上使い続けています。そのためかデータ処理機のPCと本体とのコミュニケーションの調子が悪く、メーカーと相談しました。「PCとインターフェース及びソフトと全ての取替えが必要です。」と言われてしまい、高額の費用もがかかるとの事でやむなく廃棄しました。

一方VG社(購入当時)のGC-MS、Trio-1000これも15年程度使い続けている装置ですが、ある時停電でPCのハードディスクがクラッシュして、使用不可になってしまいました。 GCはあのH社のもので、全く問題なし、MSも往年の感度はありませんが、十分使用可能で使用頻度も多い装置です。

さて、使用できなくなったPCは中古かハードディスクの中古を探して、再インストールをと考えました。PCのCPUはDX66、ハードディスクは240M、さあどうしよう? 社内とネットで色々探しましたが、もうDX66はさすがにありません。「何とかしてハードディスクだけでも」と、秋葉原に探しに行きました。10G、2G、ギガ・ギガ・・・メガがない。探し続けて、やっと一番小さい、540Mを見つけました。フォーマット済み、一台680円なり!PC本体が500M以上のハードディスクに対応していなかったので、500M以下の設定で、使えるようにしました。

約半日かかってセッティングとソフトのインストール。壊れるまでは、DOSバージョンで使っていましたが、今回を機に十数年前に送られて来たバージョンアップソフト(Windows3.1版)を引っ張り出しインストールしてみました。驚くことにDOS版では考えられなかった、操作性と、見違える様な印刷精度(DOS版は画面のハードコピーのみに対応)が得られたのです。全く新しくよみがえったWindows版Trio-1000に感激。これからも異臭分析に力を発揮してもらうつもりです。

(ソフトのマニュアルが無かったので、問い合わせたところ、代理店が代わったにも関わらず、わざわざ訪問して頂き、装置の様子と過去の記憶を辿って操作説明をして下さった、旧販売代理店のJASCOインターナショナル㈱大澤技術課長に感謝です。)

この様に、性能が良くまだ十分使えるのに、PCの寿命や交換部品の在庫打ち切り等で、しかたなく廃棄される分析装置が日本中、企業・大学・公的機関にはたくさんあるのでしょう。(装置メーカーの仕事が、家電販売の様に、新製品を売る事だけにならない様に願っています。)

性能の良い装置を使って、正しいデータを出すのが分析者の第一の仕事ですが、性能の良い分析装置を出来るだけ永く使って行くのも、分析者のもう一つの役目かもしれません。

2006年1月
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