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Home > コラム > 第13回 金属臭って何?
第13回
金属臭って何?
なぜ我われはにおいを感じるのでしょうか?

その答えは、におい物質が存在するからです。 我々の鼻の奥には臭上皮という部分があり、気化したにおい物質がここまで飛んできて検知されます。 臭上皮にはいわゆるにおい物質をセンシングしている臭覚細胞があり、そのセンサーににおい物質が捕まえられにおいを感じているのです。 つまり揮発性の物質でなければにおいは感じません。

金属、陶器、ガラスを嗅いでにおいを感じたことがありますか? 金の指輪はにおいがしますか? 磁器のお皿ににおいはありますか? おそらく皆さんはにおいを感じないはずです。 金や陶磁器は揮発性の物質ではありませんので。

でも金属はにおわないのに学校の運動場で鉄棒を握った手には、強い「金属臭」を感じたのではありませんか。 同じような経験は、鼻血が出たとき口のなかで鉄臭さを感じたでしょうし、中華鍋を洗っている時にも鉄臭を感じた経験があるかと思います。 鉄も金属なので上述した理由からにおいは感じないはずです。 しかしながら鉄臭いと感じるのは何故なのでしょうか。

理由はあるにおい物質が鉄臭いと感じさせていたのです。 そのにおい物質は1-オクテン-3-オンという物質で、人の手にある脂質が鉄の触媒作用によってこの物質になったためです。 血液の中には鉄イオンが入っており、また中華鍋は鉄製ですので脂質と反応してこのにおい物質を生成するわけです。 この物質が臭覚細胞に届くからです。


とても興味ある研究を紹介します。
鉄臭を感じる場所が口の中で場所によって違いがあることがわかったということです。 また飲料の種類によっても鉄臭を感じやすいものと感じにくいものがあることも分かりました。

【右図説明】
:口の中で鉄臭を生成する場所
唇の内側や頬っぺたの内側及びのどの粘膜と
鉄二価イオンが反応し鉄臭物質が生成する。
舌の表面での生成は少ない。
その研究論文の要約部分を下記に掲載します。

これまで金属臭や味に関する多くの研究が行われてきたが未だこれらの生成場所は特定されていない。今回ヒトが鉄二価イオンの水溶液を口に含んだ時に感じる鉄臭が、何処で生成しているのか特定するために、唾液、舌の表面、頬の内側を綿棒でサンプリングし、鉄二価イオンと反応させにおいを嗅いだところ、頬の内側で強烈な鉄臭が感じられた。次に、これらの綿棒をGC-MSで分析したところ、頬内側と鉄二価イオンを反応させた綿棒で、OEO(1-オクテン-3-オン)が他より多く検出された。OEOは、鉄臭原因物質として知られており、リノール酸を含む脂質と鉄二価イオンが反応して生成する。頬内側粘膜を調査すると脂質が検出され、その脂肪酸組織におけるリノール酸の割合が、手の甲等より多いことが判明した。また、これまでの不明であった、口の中の鉄臭が、唇の内側や頬の内側、咽頭部等表面が粘膜で覆われた組織で生成していることがわかった。続いて、官能評価により、鉄二価イオンを口に含んだ時に生成するOEO量を推定したところ、2μMの鉄二価イオンで生成するOEOの量は水中濃度で10ppt程度、20μMの鉄二価イオンで生成するOEOの量は80pptであることがわかった。
(加藤寛之ら:口腔内で感じる鉄臭の生成場所 缶詰時報 Vol.90, No.3 (2011))
(2011年3月) 
 
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